Little AngelPretty devil 
      〜ルイヒル年の差パラレル

     “花冷えの雨”
 


あちこちの山野や丘なぞで
見事な桜が次々に咲き始めたのは
十日ほど前のことだったろか。
先の冬もまた、土地によっては雪深く、
風が強い日も多かったため、
降り積もってた雪を舞い上げての
視野を埋め尽くすほどの大荒れになりもして。
そんなほどに凄惨な豪雪の冬だったのが
いや実は嘘だったとするみたいに、
それは暖かい日和が
暦と一緒というノリで何ともあっけなく、
弥生の半ばに訪のうたものだから、

 “本当はまだまだ先だったはずなのにね。”

こうなってくると桜はまだかと、
人々が待ち遠しいと意を集めたのに誘われたか、
あちこちの桜が頑張って咲き始めて。
ああようやく春めいたね、なんて言い、
勝手に悦に入っていたものが、
昨日今日の急な寒の戻りに大慌て。
粋を気取って仕舞い込んだ綿入れを引っ張りだして、
急いで着膨れするだけならともかくも、

 『神祗官様も、いやさ補佐殿も、
  いい加減な予想を振りまかぬでほしいものよ』

そんな嘘八百を並べて
憂さ晴らしする公達がいるらしいのが、

 「〜〜〜っ。」

腹立たしくってしょうがない。
お師匠様はそのような予想なぞ
一度だって立ててはいないのに。
適当な言い様を、
さも“あやつならやりそうな”と
あちこちで吹聴しているのが頭にくる。

 「? どうした、ちび。」
 「え?」

お庭が望める濡れ縁にいた瀬那へ、
何をぼんやりしておるかと、
ちょっぴり揶揄するような口調で
軽快なお声を掛けてこられた
金髪金眸のお師匠様。
その瞬間、何かがぱつんと弾け、

 「…あれ?」

何だろうか、重苦しい何かが
やはり軽やかに
すうっと晴れたような気がした書生くんだったのへ、

 「ぼんやりしてっと、
  妙なものから寄り代にされるからな。」
 「あ…。」

そうだ、何でだか途中から
苛立ちみたいなものが高まりかかってた物思いで、

 「お師匠様…。」

自分でも気づかぬうち、
雨の中に紛れていた何かに憑かれていたのでしょうかしらと、
迷子の子犬みたいな顔をするセナくんへ、

 「修行が足りないなら
  補えばいいだけの話だ。」

何ともあっけらかんと笑って、
お弟子の小さな背中をどやしつけた、
こういうときだってあんまり判りやすくは甘やかしてくださらない、
そんなお師匠様だったそうでございます。


  〜Fine〜  15.04.13.



新しいキーボードでの直接打ちに挑戦です。
大昔に使ってた、液晶が数行したなかったワープロみたいで、
もどかしいたらありませんが、当分はこっちなので慣れなきゃあねぇ。
昨日は暖かだったのに、またまた冷たい雨ですね。
皆様、ご自愛くださいませ。


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